こんにちは。
今回のテーマは「パフォーマンスを上げるために必要な概念」です。
これはバスケットに限らず、全ての競技において重要な概念です。
特に指導者の方は頭の隅に置いておくと、日々のメニュー構成などに深みが増すのではないでしょうか。
私も、選手を復帰させるにあたって日々考えていることです。
身体の動きを作るもの
人間の身体は動くために構成されてます。
骨の形、筋肉の付き方、関節の位置など、様々な構造全てが合理的に構成されています。
そういった構造の一つ一つが、様々なバリエーションで働き人間の動きを作っているのです。
普段の生活をしているだけであれば、この動きについて別段注目しなくても生きていくことができます。
これはすごいことですよね。それだけ、気にする必要がないほど円滑に動作が遂行されているわけですから。
しかし、スポーツとなると話は変わってきます。
スポーツとは人間の動きを利用して行われるものですから、その動きを極めんとする者がより勝利に近づきます。
例えば、より脚が速いとか、高く跳べるとか、正確に的に当てられる…といったものです。
バスケットもそうです。
より高く、速く、強く、正確に、身体を動かせる選手が多いほどそのチームは勝利する可能性が高まります。
そのため、皆さんは日々きつい練習をしている、または構成しているのではないでしょうか。
そういったトレーニングの負荷により動きは洗練され、上達していくわけです。
(その負荷によりケガが発生することも事実ですが、今回はその話は置いておきましょう。)
そこで、誰もが考えることが「効率よく上手くなる方法」ですよね。
つまり、上手くなるためにはどんな練習をすればいいのか?という永遠の課題です。
バスケの練習でバットの素振りをする人はいないと思いますが、
その根源となりうる概念について踏み込んでいきましょう。
動作の構築 − 運動ピラミッド −
今回はあまりバスケットに焦点を当てた話し方をしませんが、必ず通ずることですのでイメージしてみてください。
まずは「運動ピラミッド」というものををみてみましょう。
これがBMSLの「運動ピラミッド」です。
この運動ピラミッドは層に分かれていて、その名の通り上の階層ほど先細り、下の階層ほど広くなっています。
これは下の層よりも大きな層を上に作ることはできないという概念を示していて、
下の層が広くしっかりしているほど、その上に積み上がるものも大きくなっていくということです。
今回示した図ではピラミッドの頂点にある動作が、「試合での動作」となっています。
その下に、「競技特異的動作」。その下に、「スポーツ動作」、「基本動作」、「要素」と積み重なっています。
これはどういったことでしょうか。
それそれについて少し説明を入れていきます。
試合での動作
これはまさに試合中の動きです。何も考えずに表現される身体の動きです。跳んだり、走ったり、競技によってはボールを追いかけたり、接触があったり。様々な動きの無限の組み合わせであると言えます。
もう少し言うと、下記の競技特異的動作の組み合わせでもあり、それにより成り立つほぼ無意識下の動作です。
競技特異的動作
これは、その競技の特異的な動きです。バスケであれば、シュート、リバウンド、ディフェンスなどの動きですね。相撲であれば四股、ボートであればオールを漕ぐ動きなどがこれにあたります。
その競技らしさを表現する動きと言っても良いでしょう。
スポーツ動作
これはおおよそ全てのスポーツに共通するスポーツの動きです。例えば、走る(ジョギング、ダッシュ)はどのスポーツでもできる必要がありますよね。ジャンプやスクワットなどの動きもスポーツ動作になります。
基本動作
この基本動作というのは、私、理学療法士特有の考え方かもしれませんが、ようは日常での動きです。例えば、歩くであったり、座る、立ち上がる、手を挙げるなどなど。歩くことができなければ、スポーツ動作の走ることは難しそうですよね。こういったイメージです。
この基本動作が、スポーツ動作を成り立たせているはずです。
要素
最もベースにあるのがこの要素というものです。筋力や関節の可動域、神経の伝達などがこれにあたります。動くための、そもそもの部分です。膝に十分な可動域がなければ歩けませんし、筋力がなければ立ち上がれません。まさに最もベースになる部分であることはイメージできるのではないでしょうか。
これらの層が「運動ピラミッド」を形成しています。
つまり、試合の動作をより良いものにしたければ、その下の層である競技特異的動作の質や幅を広げる必要がありますし、
その競技特異的動作の質を上げたければ、その下の層をより広く、良いものにしなければ運動の構築は成り立たないということです。
ベースが広くしっかりとしていれば、その上に積み上げられるものは更に増えていくというのは、
先人の「基礎が大事」という言葉そのものですよね。
もう少し見ていきましょう(^^)
技術練習だけではパフォーマンスは上がらない?!
技術練習とは、競技特異的動作の練習と言っても良いと思います。
例えば、パス、リバウンド、ドリブル、シュートなどのことですね。バスケ特有の動作です。
では、なぜ技術練習だけではパフォーマンスは上がらないのでしょうか。
運動ピラミッドを使いながら説明をしていきたいと思いますが、
まず、「競技特異的動作」はピラミッドではかなり高い位置にあります。
これはつまり先程書いたように、その下の層がしっかりしていないと成り立たない動作であるということを意味しています。
バスケ特有の動作の質や幅を広げるためには、その下「スポーツ動作の層」をより良くする必要があるということなのです。
上手く走れない、ボールを投げれない子がドリブルやパスを上手にできるはずはありませんよね?
これは技術の応用に関しても言えることです。
技術練習ではその技術は上達するのですが、下の階層がおろそかになっていると、
その技術を応用的に使ったりすることができず、広がりが小さくなります。
そのままいくと小さなピラミッドが完成するというわけです。
つまり、何かができなかったり、思ったように行かない時には下の層を見てあげる必要があるのです。
運動ピラミッドからリバウンドを考える
具体的に考えてみます。
運動ピラミッドの良いところは、頂点の動作を自由に変えられることです。
目標とする動作を頂点に置き、それを成り立たせるために必要な動作や要素を考えていくことができます。
例えば、「試合でのリバウンド」にしましょう。
リバウンド練習といえば、ボールをボードにぶつけてジャンプしてとる、というものがありますよね。
リバウンドで求められるハイパフォーマンスとは、高い位置でのボールキャッチが必要となるでしょう。
そのためにはまず、高く跳ばなければなりません。また、腕をタイミングよく伸ばさなければなりません。
これをピラミッドの一つ下の階層(スポーツ動作)で考えると、垂直跳びの能力がこれに類似した能力です。
垂直跳びとは、下半身の運動と思われがちですが、上半身の動きがかなり重要になります。
下半身の関節をグッと曲げたときに、腕を後方に振り、そこから真上に跳ぶタイミングで腕を振り上げます。
例えばこの、垂直跳びが上手くできない選手が、リバウンドでハイパフォーマンスを発揮できるでしょうか。
もちろんリバウンド練習をこなすことはできます。ただ、目指すのは、さらに一つ上の階層(試合中の動作)でのリバウンドですよね。
相手がいたり、不規則なボールの動きのなかで、この選手はパフォーマンスを発揮できるでしょうか…。
例えばこういう選手がいたとして、練習すべきはリバウンド練習ではなく、まずは垂直跳びの練習となるわけです。
リバウンド もっと下の階層を見る!
リバウンドの例を引き続き使います。
垂直跳びが上手くできない(高く飛べない、タイミングが合わない)場合には、さらに下の階層を見る必要があります。
最も下の階層から垂直跳びができない原因を考えてみます。
最も下の階層は要素がたくさん詰まっている階層でした。
垂直跳びに関わる要素として私が考えたものは、
- 可動域:股関節、肩関節
- 筋力 :大殿筋、ハムストリングス、体幹筋 です。
まずは、可動域についてですが、股関節がしっかり曲がるのか?肩関節がしっかり上に伸ばせるか?ということです。
股関節が硬く、上手く動かない場合、筋力の要素にもマイナスの影響がかなり出ますので、大殿筋やハムストリングスの筋力発揮は間違いなく低下しています。
可動域が十分にある場合は、筋力が足りないのでは?という問題になってきますが……
細かいことは置いておいて、つまり、この階層の不具合を解消しないまま、上の階層のパフォーマンスが上がるはずもありません。よね?
こういった場合には、やはり要素の質を上げるしかありません。
つまり、柔軟な股関節と強靭な筋肉を獲得するということですが、
例えば、このような選手に、股関節のストレッチと筋トレを自主練習として課題を出し、体育館では垂直跳びをやらせた後に、リバウンド練習をさせる。
というようなメニューが組めれば、効率的にパフォーマンスが上がる気がしませんか?
いかがだったでしょうか。
なにか動作指導をしていると、「うまくいかないな~」なんて感じることもあると思います。
そんな時に、「選手が悪い!」と感じる指導者の方は以前よりかなり減った印象がありますが、
ここで「自分の技術指導方法が悪い!」と考えてしまうのも少しもったいないような気がします。
そもそも、その下の階層が上手くできていないという可能性を考えてほしいのです。
「レイアップが上手くできなければ、ランニングジャンプはどうだろう」
「シュートが届かなければ、ボール投げはどうだろう」
といったように、下の階層を見てあげると、できない理由がはっきりしたりします。
そういったところから練習に取り組んだり、構成したりすると練習効率は間違いなく上がると思います。
是非、「運動ピラミッド」的考え方を試してみてください(^^)
相談等はTwitterでのDMか、メールにてお気軽にお問い合わせください。
長文失礼いたしました。
コメント
コメント一覧 (4件)
[…] ダッシュやジャンプなどのスポーツ動作がある程度安定してきたため、競技特異的動作のリハビリが始まった。 […]
[…] これは運動ピラミッドでいう、最も下の階層である要素(可動域、筋力)の部分がが深く関係しており、そこの原因を解決しないことにはKnee in Toe outの修正はできないのです。 […]
[…] 運動ピラミッドで見てみると、 […]
[…] 運動ピラミッドで見てみると、 […]