こんにちは。
今回のテーマは「バランス」です。
スポーツをしているとよく耳にする言葉ですよね。
戦術的なバランスもあれば、精神的なバランスもありますが、
今回紹介するのは身体的なバランスです。
「バランスが悪いから…」とか、「バランス良いね!」なんて言ったりしますよね。
そのバランスについて今回は書いていこうと思います。
バランスを考える
理学療法士として働いていると「バランス」という言葉とよく戦うことになります。
例えば病院で「この患者様はバランスが悪いので、一人では歩けません。」などと症例報告をすると、ベテランの先生からガツンと一発食らうことになります。
これは理学療法士あるあるなのですが、なぜでしょうか。
要は、上記の発言だと「なぜバランスが悪いと思われる身体現象が生じてしまうのか?」という疑問をすっ飛ばしてしまっているからです。
つまり、「この患者様は脳梗塞により右足の感覚がなく、運動も十分にできないため一人で歩くのは難しいです。」と報告すれば、
この患者様の何が問題で、それを解決するにはどうすればよいのか?というビジョンが生まれます。
じゃあ杖を使ったらどう?とか自宅に手すりをつけなきゃね、といったようにその問題に対する解決策が出てくるわけです。
理学療法士の世界では「バランスが悪い」と言うだけでは、その解決策や治療方針が見えにくいのです。
さらに言うと、この患者様にとってはバランスが悪い事自体は問題ではありません。
バランスが悪く、一人では歩けないということが問題なのです。
だから自宅生活が困難になるし、買い物や仕事など日常生活に支障が出てしまいます。
つまり、理学療法士としてはバランス能力を向上させることで日常生活の問題を少なくしていきたいわけですから、
バランスを良くすることも目指してはいますが、それによって生活ができるようになることを最終的に目指しているわけです。
うーん。なんだか難しい。
スポーツの分野にこの話を落とし込んでみましょう。
例えば、片足立ちでバランスが悪いと評価されたバスケ選手いたとします。
この選手はこれはいけないと、片足立ちを完璧にするために、片足立ちの練習を沢山することにしました。
その結果、片足立ちは完璧にできるようになり、バランスは良いという評価をもらうことができました。
さて、これでいいのでしょうか?ということです。
この選手が片足立ちの日本代表であればこの練習は良い練習となるでしょう。
でもこの選手はバスケの選手です。
バスケおいても片足立ちは重要な要素であることは間違いありませんが、片足立ちをうまくすることが目的となってしまう練習はなにかズレている気がしますよね。
要はバランスを良くすることが、バスケの動きを良くするという最終的な目的に繋がらないとバランスの意味がよくわからなくなってしまうのです。
バランスを見る上で大事なこと
皆さんは何をもってバランスが悪いと判断しますか?
例えば、片足立ちでフラフラしている選手がいたとします。
さて、フラフラすること自体が「バランスが悪い」ことでしょうか。逆に言えば、フラフラとすることでこの選手はバランスが取れているのです。
片足立ちの際にその場に立っていられず、ケンケンしてしまう選手がいます。
これも同様に、ケンケンすることで片足立ちという姿勢を維持しているわけです。
この選手たちに対して「バランスが悪い」と一概に言うことができるのでしょうか。
この二人の選手に「バランスが悪い」と言うためには、それを評価する者が一定の基準を持っている必要があります。
例えばこの二人の選手に課された課題が「片足立ちで、その場に、微動だにせずいること」であった場合、その課題を達成できなかった選手は評価者の基準では「バランスが悪い」ということになるかもしれません。
つまり片足立ちの課題が「ケンケンしないこと」であれば、どんなに身体をくねらせても「バランスが良い」という判断になるかもしれないということです。
難しいですね。
実は、「バランス」とはなかなか抽象的な言葉であって、チェックする側でしっかりと定義してあげないと「良い・悪い」の判断は難しくなります。
ただ単純に片足立ちチェックにおいて、「フラフラしているからバランスが悪い」というのは実は少々ズレた評価になってしまっているのです。
スポーツ動作でのバランス
しかし、何か具体的な動作のためのバランスとしてチェックする場合には、運動学的にある程度明確な良し悪しの評価ができます。
例えば、野球のピッチャーは投球時に数秒片足立ちをする時間があります。
それは、その片足立ちをすることで、ボールの速さや正確性に有利な身体の使い方ができるからです。
この片足立ちでピッチャーがフラフラとしていたら?
これはボールを速く、正確に投げるという目的において理にかなっていない動きとなります。
となれば、投球をするにあたって「バランスが悪い」ということができると思います。
ピッチャーをしている野球少年が片足立ちチェックでフラフラとしていたら、
「このフラフラは投球においてネガティブな影響を与えるから、バランスが悪い!」と言えるわけですね。
では、バスケにとってのバランスとはどんなものなのでしょうか。
バスケは野球と違って、静止した片足立ちをするシーンはありません。
「そしたら片足立ちバランス関係ないじゃん」と言いたくなるかもしれませんが、そういうわけでもありません。
片足立ちの時に身体が必死に行っていることは簡単に言えば、
「不安定な状況でもなんとかして姿勢を維持する!」ということです。
これはバスケにおいても常時必要とされる能力ですよね。
シュートや競り合いの中でも、自分にとって不利な姿勢に崩れてしまうことは競技的にネガティブな影響が出てしまいます。
バスケ選手における片足立ちチェックは、こういった不安定な状況でも「自分にとって有利な姿勢を維持し続ける能力」を評価するための1つの方法となり得ます。
もちろん、ケガの回復状態を見る場合でも、目的は同様です。
「ケガをした足でも自分にとって有利な姿勢を維持できるか?」をチェックするわけですから。
それができなければ、「バランスが悪い!」といえますよね。
いかがだったでしょうか。
難解な記事になってしまいましたね。
バランスとはそれほどに複雑で、難しい概念です。
評価者がどういった視点で評価するかによって、その良し悪しが変化する可能性があるものです。
ただ、一つ言えることは、バスケ選手にとってバランス能力の向上は最終目標ではありません。
バランス能力の向上が最終目標を達成するために必要な要素となるのです。
最近はバランストレーニングなどの重要性が叫ばれていますが、一度その難しい概念について思いを巡らせてみても良いかもしれません。
長文失礼いたしました。
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