こんにちは!BMSL(@Basketball_MSL)です!
今回のテーマは、バスケのケガで多い「【足関節捻挫】を解剖学から学ぼう!」です。
捻挫の程度は様々ですが、バスケをしていて受傷したことがある方も多いのではないでしょうか。
今回は、この足関節捻挫を解剖学の視点から学んでいこうと思います。
正しい理解が復帰への近道です!図を多めにできるだけ易しく解説しているので、ぜひ読んでみて下さい。
足関節捻挫からの復帰において注意すべきこともまとめています!
それでは早速参りましょう。
- 本記事の筆者
足関節の構造
まずは「足関節の構造」について理解を深めましょう!
足関節の構造は、実はかなり複雑です。多くの骨があり、多くの関節があります。
こちらは「骨」のみの足関節の図です。
脛骨、腓骨があり、その下に距骨、踵骨(かかとの骨)があります。
足関節として最も大きく動く関節はこの脛骨・腓骨と距骨の間の関節(距腿関節:赤線)です。
つま先を上に向ける背屈や、つま先を下に向ける底屈が主な動きです。
そして、その下にある関節(距骨下関節:緑線)は距骨と踵骨の間の関節ですが、ここで内がえしや外がえしの運動が生じます。
次にこちらが「靭帯」をつけた図です。
関節は骨と骨だけでは安定性がなく、ズレたり外れたりしてしまうのですが、それをさせないように付いているのが「靭帯」です。
靭帯は骨と骨を繋ぎ、関節の動きが大きく逸脱しないように支えてくれています。
外側をみてみると、腓骨と距骨、踵骨を大きな3つの靭帯がつないでおり、安定させているのがわかります(赤線)。
反対に内側では、脛骨と距骨が大きな靭帯でしっかりと覆われています(青線)。
先程、距腿関節は背屈と底屈の運動を行うと書きましたが、その運動は“両側をしっかりと靭帯が支えてくれている”からこそ可能となる運動なのです。
骨:脛骨・腓骨・距骨・踵骨
関節:距腿関節(脛骨・腓骨−距骨の間:底屈・背屈の運動)
距骨下関節(距骨−踵骨の間:内がえし・外返し)
靭帯:内側と外側にある
足関節捻挫
足関節の構造について少し理解できましたか?それでは本題の「捻挫」の話に入っていきましょう!
足関節捻挫で最も多いのが内反捻挫というタイプです。
「内反」という動きは、足の裏を内側に向ける動きです(下図)。
大した衝撃でなければ組織が痛むことはない動きですが、スポーツなどで「強い衝撃」が加わると靭帯に損傷が生じてしまいます。
①足関節に急激な内反運動が生じると、外側の靭帯に伸長ストレス(引っ張られる力)が加わる
②この伸長ストレスにより靭帯が引き伸ばされ損傷する→内反捻挫
内反捻挫に伴い損傷する靭帯は「前距腓靭帯」という靭帯がほとんどであると言われています。
そのため、内反捻挫後は足首の外側が痛くなったり腫れたりするのです。
「内側が痛くなるんですけど…」
内反捻挫なのに外側だけでなく内側が痛くなる場合があります。
実は、これも内反捻挫でよくある痛みです。
図で見ていきましょう。
先程のように足関節を内反させると、外側の靭帯は伸長されますが、内側の靭帯はどうなっているでしょうか?
このとき、内側の靭帯自体は緩む形となっていますが、実は強い「圧縮ストレス」が加わっています。
つまり、内側では脛骨と距骨がぶつかりあうような形になっているということです。
この圧縮ストレスによって靭帯を含んだ組織を損傷した結果が、内側の痛みとなって現れるのです。
よって、内反捻挫をしたときには両サイドの痛みに対して処置する必要があります。
「内反捻挫=外側の痛み」ではなく、内側の痛みにも要注意
復帰において絶対に注意したいこと
足関節捻挫が癖になってしまう選手って多いですよね。
実はこうした選手の多くが、捻挫後の復帰に関して間違った判断をしています。
「痛くなくなったから復帰」
「痛いけど動けるから復帰」
そして、
「病院には行ってない」
「専門家に相談していない」
など。
このような自己判断は、捻挫の再発という意味で非常に危険です。
では、なぜ自己判断は危険なのでしょうか?
それには、足関節捻挫に伴う、
- 靭帯の緩み
- 神経筋機能の低下
が関係しています。
靭帯の緩み
捻挫によって靭帯が損傷し、適切な処置が行われなければ靭帯はその重要な機能を失います。
つまり、骨と骨を強い張力で繋ぎ支える力が低下してしまうということです。
これが、いわゆる「緩み」です。
では、靭帯が緩むとどのような事が起こるのでしょうか?
靭帯が正常(上図左)であれば、内反に対して張力を発揮し動きを制動してくれます。
しかし、緩みが生じている(上図右)と内反の動きを制動できなくなる、つまり、正常よりも内反の可動域が大きくなります。
一見、可動域の拡大は良いことのように思えるかもしれませんが、これに関してはネガティブな影響を与えます。
つまり、今まで靭帯が支えていた部分がなくなり、より足関節は内反に動きやすくなってしまうので、ふとした瞬間に足が内反に傾き、再度捻挫をしてしまうリスクが高まるのです。
どうすればいい…?
捻挫後は、このような「靭帯の緩みの有無」を専門家にチェックして貰う必要があります。
初期の安静、固定によってある程度靭帯は回復しますし、もし後遺症として緩みが残ってしまったとしても、適切なテーピングやサポーターによってある程度はカバーできます。
素人判断で捻挫から復帰するのは非常に危険です。
捻挫を繰り返す前に専門家に相談することをオススメします。
神経筋機能の低下
足関節を支えているのは靭帯だけではありません。
多くの筋肉が足関節の周囲に存在し、それを神経が絶妙にコントロールすることで、動きを支えています。
こういった神経、筋肉の機能は足関節に安定性をもたらしますが、捻挫により炎症や腫れ、痛みが生じると、その機能もガクッと低下してしまいます。
神経や筋肉が働かなくなるとどうなると思いますか?
筋力がさらに落ちちゃうんじゃ…
正解です!…が、事態はもっと深刻なんです…
捻挫によって筋肉が上手く働かなくなると、脳は自然と足関節周囲の筋肉を使わなくても済む姿勢を探し、勝手に楽な動きを学習してしまいます。
その結果、足関節の動きには偏り(痛くない方、怖くない方への偏り)が生じ、いつの間にか正常な動きができなくなります。
つまり、「身体の使い方」にまで影響が出てしまうのです。
身体の使い方に影響が出た状態のまま、自己判断で運動を再開すると、神経、筋肉の機能が十分に戻っていないため再び捻挫してしまうのです。
どうすればいい…?
捻挫後の神経、筋肉の機能を自分で判断するのも非常に難しいので、やはり専門家に診てもらうことが大切です。
なぜなら先程書いたように、脳が勝手に身体の使い方から変えてしまうからです。
捻挫から自己判断で復帰したがために、身体の使い方に左右差が生じている選手は意外に多く、それが再発のリスクに関係しています。
捻挫からの復帰にはしっかりとしたリハビリが重要です。
たとえ医療機関に行かなくても、復帰には段階的なプログラムが必要となります。
痛みや腫れがなくなったからと自己判断で復帰することが、再発のリスクを高めます。捻挫を受傷した際は、可能な限り専門家に診てもらいましょう!
チームで持っておきたいリハビリアイテムをまとめています。
まとめ
足関節捻挫について、解剖学的な視点からまとめてみました。
捻挫によって足関節にどのような事が起こっているか、少しイメージはできましたか?
捻挫自体をなくすことは非常に難しいことですが、不十分なリハビリや自己判断による捻挫の再発は避けたいところです。
- 自己判断での復帰は避ける
- 可能な限り専門家へ相談、受信を!
少しでも皆さまの理解を深められていれば幸いです。
最後までお読み頂きありがとうございました。
別記事でも捻挫の記事がありますので、ご覧いただければと思います。
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資料タイトル一覧
- 機能解剖学に基づくシュートフォーム
- シュート探求:肘の挙がりと曲がり
- No!More!オスグッド・シュラッター病
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