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今だから、”Early Sports Specialization(子どものスポーツ早期専門化)” を考える。

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こんにちは。BMSL(@Basketball_MSLです!

皆様いかがお過ごしですか?

コロナによる活動自粛から、再開、そして今後どうすれば?

と、何かスッキリしない日々を過ごされているのではないでしょうか。

これは個人的な考え方ですが、何かスッキリしない時には、スッキリしないことをするほうが効率が良い…!

ということで、今回はすぐに答えの出ないであろう問題、

”Early Sports Specialization(子供のスポーツ早期専門化)”

について書いていこうと思います。

「こうすべきだ!」とか、

「これは良くない!」といったものではなく、

「まず知り、考えてみよう!」という感じにできればなと思います。

こんな状況ですから、ダラーっと読んで、モヤッとしていただければそれでいいかなと思っております…笑

では、内容に入っていきましょう。

目次

Early Sports Specializationってなに?

日本ではスポーツ(競技)の早期専門化と訳されることが多いようです。

主にアメリカで多くの問題提起が起こっているようで、日本ではまだあまり聞かれない言葉かと思います。

問題提起といったように、要は「早期の専門化は良くないぞ」という流れになってきているということになります。

「え?早くから競技を専門的にやったほうが上手くなるんじゃないの?」

と考える方も多いと思いますが、

これもまた難しい問題をはらんでおります。

その辺りについても、「ふむ…。」となる程度には情報を提供できればと思います。

様々な研究で言われていること

競技の早期専門化が子どもたちに与える影響については様々な角度、視点から研究が行われています。

結論から言うと、「あまり推奨されるべきものではない」といった感じでしょうか。

こちらのレビューがとても参考になります。

この文献は多くの研究をまとめて総説してくれているものです。

無料で読めるので、お時間のある方はご覧ください。

ここから、考えるための種をいくつか抽出して紹介します。

早期専門化の定義

「どうなったら早期専門化なの?」という問いにはある程度答えが用意されています。

一定の定義は未だないものの、最近では、Jayanthi(ジャヤンティ)という先生の作成した尺度で専門化の程度を分類するようです。

たった3問の質問形式ですので、是非お子さんに答えてもらってみてください。

Jayanthi Scale (競技の専門化の程度を分類する尺度)

Q. メインのスポーツに集中するため、他のスポーツをすべてやめましたか? (Yes / No)

Q. メインスポーツが他のスポーツより重要だと思いますか? (Yes / No)

Q. メインスポーツの練習やトレーニングを年間8ヶ月以上取り組んでいますか? (Yes / No)

Jayanthi, AJSM 2015より

拙い訳で申し訳ないのですが、とてもシンプルな尺度ですね。

Yes or No の形式で答え、Yesを1点として計算します。

専門化の程度分類

✔ 0~1点:軽度

✔ 2点:中等度

✔ 3点:高度

すべてYesだった選手は競技の専門化が高度であるとされます。

では、「高度だったら何なの?よくないの?」という質問に進んでいきましょう。

メリットに潜むリスク

早期の専門化はもちろん悪いことだけではありません。

競技の中には、早期の専門化を推奨される種目もあります。

後で出てきますが、IOC(国際オリンピック委員会)もそれについては認めています。

例えば、フィギュアスケート、体操といった競技がそれに当たります。

この種目は

・競技動作が非常に独特(他のスポーツにあまりない動きが主体)であること

・パフォーマンスのピークが早期に訪れること(特に女子)

から、幼少の頃から専門的に取り組まなければ、エリートレベルに達することは難しいと考えられています。

競技の早期専門化は、その特定競技に特化した技術、運動発達が促されます。

なので、間違いなく早期に上手くなることができます。

また、競技に特化した体の使い方がとても上手になるので、スポーツ障害は増えるが、外傷は減る、といったことも文献中では示唆されています。

しかし、こういったメリットもある中で、リスクとして頻繁に提示されるのが、

競技の早期専門化に潜むリスク
  • スポーツ障害発生リスク増大
  • 燃え尽き症候群の増加
  • 競技離脱率の上昇
  • 基本運動能力の狭小化

といったものです。

それぞれの説明に関してはまた今度にしようと思いますが、

要は、特定の種目を除いて、

こうしたリスクを容認できるほどのメリットが早期専門化にはない

という見解が多いということなのです。

私自身、間違いなく早期に専門化した人間ですが、競技離脱以外はなんとなく当てはまる気がします。
もちろん、気がついたのは随分大人になってからですが。

早期化に対する認識

では、現場の認識はどの様になっているのでしょうか。

この問題が円満解決していないということは、つまり現場ではこの認識が浸透していないということなのでしょうか。

文献によると、早期に専門化させる傾向は、選手、コーチ、そして保護者の認識によるものが大きく影響しているようで、

調査によると、大学やプロレベルでプレーしたい(させたい)という願望が早期の専門化を決断する大きな要因になっているとのことでした。(Padaki AS, 2017. Brooks MA, 2018. )

では、リスクを認識していないのかと言うと、そうでも無いようで、指導者は専門化とケガの関連性に関しては認識があるようです。

だた、

「では、ケガを減らすためにはどうすれば良いか?」

という点に関しては、知らない・分からない、という指導者・保護者が多く、子どものスポーツに関わる大人への教育の必要性が浮き彫りになったということでした。(Bell DR,2018. Post EG, 2018.)

「わかっているけど、どうすれば良いかわからない。ただ、うちはこんな風にやってるよ(独自の経験論)」
というのは私の知る限り、日本の現状と似ていると感じます。

多様な運動と子どもの運動発達

早期専門化の反対語は、運動経験の多様化、といったところでしょうか。

逆説的にみれば、早期に競技を専門化してしまうということは、多様な運動経験を得る機会を減らしてしまうということになります。

これが、先ほど項目として挙げた”基本運動能力の狭小化”につながるのではないか?と考えられているのです。(Lloyd RS, 2016.)

バスケットで例えてみます。

バスケの日本代表は、フィジカルの部分で世界と大きな差があると言われています。

フィジカルの一つの要素である「コンタクト(身体接触)」に関して考えてみましょう。

仮に、現在の日本代表選手の殆どがバスケットを早期専門化させた人たちだったとします。

バスケットは基本的に身体接触を違反とするスポーツですから、幼少期からそのスポーツで専門化してしまうと、身体接触に対する身体の使い方、スキルに関して未経験のまま成長していくことになります。

そして、いざ国際大会の舞台でコンタクトを求められても、幼少期からアメフトやラグビー、サッカーに参加してきた海外選手にはなかなか敵いません。

このように、別競技への参加経験が、メインスポーツのパフォーマンスに良い影響を与えることは十二分にありえることです。

名実ともにスポーツ大国のアメリカが、マルチスポーツ(複数のスポーツをすること)を推奨しているのには、今後もオリンピックで金メダルを量産するための作戦なのかもしれません。

「じゃあ、バスケのパフォーマンスを上げるために今から取り組ませるべきスポーツは何だ?」と思考が進むかもしれませんが、実はこの考え方はこの文献の意図するところではないように思います。
後述しますね。

世界のスポーツに関わる組織の立場から

この文献に掲載されていた、子どものスポーツに関わる組織の早期専門化に対する提言、立場表明の表を簡単に訳してまとめました。

かなり見づらいのですが…ご覧ください。

やはり国際的な組織としても早期専門化に対しては反対の立場が多いようです。

日本の組織のものは見つかりませんでしたが、もしかすると探し方が足りないのかもしれません。なにか情報がありましたらぜひご一報下さい。

ちらっと見て感じることは、どの組織も短期的な成績に焦点を当てていないということです。

長期的なキャリアの形成、燃え尽き症候群、ドロップアウトの防止、生涯スポーツ参加、といったところに重きが置かれているように感じます。

レベルは様々だが、スポーツは生涯行う(楽しむ)ものであり、子どものスポーツはその一部に過ぎず、そこで無限の可能性を摘み取るわけにはいかない、といったことなのでしょう。

日本の現状

この早期専門化に対する方策が、日本ではほとんど何もなされていません。

でも、それはそうだと思います。先程も書きましたが、これがここ最近のトレンドだからです。

これからどうしていくか?もしかすると、なにそれ?という段階かもしれません。

日本で早期専門化に対して組織的に方策を立てるとすると、まず競技のシステムを変えなければならないでしょう。

伝統的なトーナメント制の見直しは必要になると思います。

一回勝負、負ければ試合数自体が減ってしまうトーナメント制は、どうしても早期専門化を助長します。

リーグ制、単一競技から離脱するためのシーズン制、部活制度の見直しなど、

考えなければいけないことは沢山あるのではないかと思います。

現状、日本で早期専門化を止めることは難しいでしょう。

Early Sports Specializationをどう考えるか

ここまで研究で言われていることや、それをもとに世界的なスポーツに携わる組織がどのように考えているのかを紹介してきました。

言ってしまえば、これが現在の最新トレンドでしょう。

スポーツ先進国が取り組みだした課題ということになると思います。

ただ、それを鵜呑みにして、真似するのは違うかなと個人的には思っています。

それは、そもそも海外と日本では、スポーツに対する考え方や文化が違うと感じるからです。

日本の文化に合うスタイルとは

日本にはアメリカのようなシーズン制という文化がないため、自ずと一つのスポーツに打ち込むことが増えます。

つまり、シーズン制があり、マルチスポーツが当たり前だったのが早期専門化によって変わってきている、と危惧するアメリカと、そもそもマルチスポーツの文化のない日本では、問題意識というか潜在的な問題が異なると考えています。

これが、国際的な組織が提唱することを鵜呑みにするのは違うと考える理由です。

日本には日本にあったスタイルが有って良いと思いますし、もしかすると何十年後には世界基準になるのかもしれませんが、今すぐには無理でしょう。

とはいえ、ケガの発生や燃え尽き症候群など、このまま見過ごしてもいられないデータが存在します。

将来的なパフォーマンスにも影響を与えるということも示唆されているわけですから、取り入れられる部分は積極的に取り入れたいものです。

なぜバスケなのかを考える

一つ言えることがあるとすれば、子どもを取り巻く大人が可能性を絞っていはいけないということでしょうか。

「子どもをプロバスケ選手にしたい」という保護者がいます。

もちろんお子さんがそう口にしたのでしょうし、本気なのでしょう。

ただ、もしかするとサッカーや水泳、柔道、バレーなど、他のスポーツでスーパーな才能が開花する可能性も十分にあるわけです。

実際にオリンピックに出場する選手の7割は幼少期に複数のスポーツに参加してるという調査結果もあるようですよ。

そういった意味では、多くの競技に参加して、自分の好きなもの、楽しいもの、興味あるものを探す(スポーツサンプリングといいます)機会があって然るべきだと思います。

保護者がバスケをしていたから、子どもにもバスケをさせたいという気持ちがあるのもわかりますが、

グッとこらえて子どもの可能性を見つけてあげることも大切な役割なのかもしれません。

指導者は何を目指している?

当たり前のことですが、バスケの指導者は、バスケの指導者であるべきです。

つまり、バスケットの楽しさ、上手になる方法、活躍する方法を教えてくれる大人です。

その選手が人生をかけてバスケに取り組むのか、明日から別の競技に取り組むのか、そこはバスケの指導者が決めることではありません。

もちろん、日本バスケのために才能のある選手をバスケ界に留めたい!という気持ちもあると思いますが、

むしろ様々な競技を経験して、バスケに戻ってきてくれる方がより良かったり…。

「うん。やっぱり僕、私にはバスケットだ!」

と思ってもらえるような指導者、チームが増えるといいですね。

BMSLの立場表明

最後に、

様々な考え方に触れることで考えは変わると思いますが、現状、文献や現場での話、自分の経験などを踏まえて、

BMSLとして子供のスポーツ早期専門化についてどう考えているかを書いてみようと思います。

子どものスポーツ早期専門化には反対

いくつかの種目を除いて、早期に専門スポーツを決めてしまうことには賛成できない、というのがBMSLの立場です。

ケガの発生、燃え尽き症候群などもそうですが、パフォーマンスに関しても多様なスポーツを経験していたほうがその可能性は広がるように思います。

NBA選手の中にも幼少位は別競技に取り組んでいたという選手は多くいます。

個人的な印象でも、体育館で出会う「あ、この子雰囲気あるな」という選手に話を聞くと、小学校までは複数種目をやっていたということは意外とよくあります。

なんといいますか、
バスケしかやっていない子は上手いんですけど、動きがバスケだけなんです。
動きの手札が少ないと言うか…。すでに洗練されちゃってるというか。

そういった、子どもの持つ無限の可能性を狭めない、という意味でも早期専門化はもったいないかなと思います。

メインスポーツはあっても良い

ただ、メインスポーツはあっても良いかなと思っています。

つまり、「僕はバスケの選手になるんだ!」という子には思いっきりバスケに時間を割けば良いと考えます。

海外の提言の中には、年間8ヶ月以上単一のスポーツに参加させることは…とありますが、日本のスポーツ文化ではなかなか難しい。

もちろん可能でしょうが、それもまた選手の楽しみを奪うような気がします。

専門化の線引はなかなか難しいですが、先程のジャヤンティのスケールで考えると、

メインスポーツのある非専門化を目指して
  • メインのスポーツに集中するため、他のスポーツをすべてやめましたか? (No)
  • メインスポーツが他のスポーツより重要だと思いますか? (Yes or No)
  • メインスポーツの練習やトレーニングを年間8ヶ月以上取り組んでいますか?(Yes )

だと、合計1~2点で専門化の程度は軽度~中等度となる

といったところを目指す、あるいは目指せる環境が日本においてはまず必要かなと思います。

他スポーツに触れるための時間を

つまり、「バスケが一番好きだし、上手くなりたいけど、友達がやってる空手と水泳もやりたい!」に答えられる環境作りが必要です。

そういった環境を作るには、絶対的にバスケがない日が必要です。つまりOFFがあること。

あるいは、毎回練習に来なくたって楽しめる、試合に出れる、上手くなれるチームであるということでしょうか。

これは、サッカーをメインにしている子が週1回だけバスケしに来る、といったことも受け入れられる環境が必要であるということです。

いかがですか?これはもはや私の夢かもしれませんね。

早期専門化を遅らせるには、多様なスポーツに参加するための時間が必要です。

その時間を奪ってはいけませんし、奪うような環境ではいけないかなと思います。

子どもの頃に必要なこと

個人的には、自分のためにスポーツをすることだと思っています。

自分自身が、自分自身のために「楽しい、面白い、上手くなりたい、勝ちたい」と思えることが必要だとおもうのです。

別の視点で言えば、「今日は友だちとカードゲームをしたいから、バスケは休んじゃお」というのも自分のためにスポーツと関わることだと思います。

子どもの興味や、集中力、モチベーション、優先順位などは変動して当たり前です。

昨日一番大切だったことが、今日変わっても不思議ではありません。

そう考えると、ずーっと何年もバスケットの入れ込む子のほうが不自然に思えてくるのです。

もちろんそういった子もいるでしょうが、

SNSなどをみていると、何割かの子は

「そうするとお父さん、お母さんが喜ぶ」から、バスケに熱中しているのでは?

と感じることもあります。

バスケ少年少女に「なんでバスケなの?」と聞くと、「お父さん、お母さんが…」と答える子は結構いますよね。
もちろん悪いことではないですが、
「楽しいから」、「〇〇ちゃんがやってるから」、「なんとなく」、といった答えが帰ってくるほうが自然かなと思うのです。

その真意、真相はわかりませんが、子どもにはもっと自己中心的に興味関心を様々な方向に向ける能力があるはずです。

その中で、熱中したり、嫌になったり、立ち向かったり、逃げたり、することが大切なのではないかと考えています。

もちろん、自分のために。

おわりに

ダラダラと書いてきましたが…

Early Sports Specializationや、それが抱えている問題など、なんとなく知ってもらえたでしょうか。

これについては私も調べたり、考えたりしているところです。なので、スッキリはしていません。

私は、この記事を通して、少しでもスッキリしない人が増えてくれることを望んでいます。笑

私の子(長男)はまだ1歳で、その尊い日々を全身で楽しんでいるようですが、やはり

「将来はどんなスポーツをやるのかな…」

などと考えてしまいます。

スポーツが好きになるかもわからないのに…笑

此奴の成長とともに、私の考え方も変わっていくのだろうと思います。

皆さんもこのスッキリしない問題に思いを馳せてみていただけると幸いです。

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この記事を書いた人

BMSL管理人のアバター BMSL管理人 理学療法士

“痛みのないバスケ”を目指し活動している理学療法士です。
バスケ選手の身体の使い方を分析し、それに必要なケア・トレーニング方法などを日々考えています。
機能解剖学的視点から新たなシュート理論を構築中です。

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