ミニバスを指導していますが、シュートにループがかかりません…。
何度も言っているのですが…。
言っても変化がない場合、根本的な問題が隠れているかもしれませんね…。物理学的な視点を加えてみてはいかがでしょうか。
物理学的な視点か…
(難しいのはちょっと…)
難しいことはありません!まずは、「ループに必要な力」を知ることから。
必ず役に立ちますよ!
こんにちは。
BMSL(@Basketball_MSL)です!
今回のテーマは、「なぜループがかからない?」です。
以前、ループの重要性についてお話しましたが、今回はループがかからない理由についての内容です。
単に力が足りないからといってしまえばそれまでですが、そこにメスを入れてみましょう。
特にミニバスの指導者の方にとっては重要な知識になると思います。
- 本記事の筆者
ボールに加わる力を知る
まずは、ボールに加わる力の話からです。
シュートの際、ボールが空中に投げ出されるには、ボールに力が加わる必要があります。
問題は、このボールにどのような力が加わっているか?ということです。
あまり意識されないことですが、力には方向と強さという性質があります。
詳しい説明はその道の専門家に委ねますが、ここではその2つの力、方向と強さを簡単に分析する方法をお伝えしようと思います。
この方法は、力の合成・分解と呼ばれるもので、中学の理科で少し触れているようです。
これを大まかにでも理解できると、シュートの軌道からボールに加わる力を予想することができるようになるでしょう。
軌道をみただけで、「どんな力が足りていないか」を分析できると、選手の問題点の整理に役立つはずです。
では、具体的に見ていきましょう。
力の性質 ①方向
単純に考えれば、力が加わった方向にボールが飛んでいく、というシンプルなものなのですが、それをさらに分解すると面白くなっていきます。
図でみてみます。
放たれたボールが放物線を描くということは周知の事実ですが、空間中にあるボールにずっと放物線の力が加わり続けるわけではありません。
力が加わるのは、ボールと手が接触している間です。
つまり、手からボールが放たれるまでに加わる力によって、そのボールの運命(方向性)は決まります。
放たれた後は、手から伝えられた力の作用によって空間中に飛び出し、重力にしたがって落ちてくるだけです。
図1では、この放たれる瞬間にボールに加わる力を示しています。(黄色矢印)
これを先程の、力の合成・分解を利用して分析してみます。
この斜めの力を分解すると、2つの力、垂直方向の力と水平方向の力に分けることができます。
つまり、このボールは、垂直方向と水平方向の力が合わさることによって斜めに飛んだ、と分析することができるのです。
なんのこっちゃ…ですが、この分解がシュート分析に効いてくるんです。
力の性質 ②強さ
次の分析は、どれくらいの力で?という問題に対してです。
物理学の世界では、力の大きさを矢印の長さで示すことができます。
どういうことかというと、
は…!!!
なんとなくわかりましたか?!
図中の左側のボールは上に、右側のボールは横に飛んでいくことが示されています。
これらの力を先程と同様に垂直方向と水平方向に分解すると、それぞれの長さに違いがでます。
左のボールは垂直方向に長い矢印と水平方向に短い矢印、右のボールはその逆。
そうです。
これはまさに、ボールに長い方の力がより多く加わったことを意味しているのです。
イメージできますでしょうか。
「ループがかからない」は垂直方向の力不足が原因
ここまでくると、力を分解して分析してきた意図がわかっていただけるかと思います。
つまり、ループがかからない選手に不足している力は「垂直方向の力」なのです。
- そもそも垂直方向に力を発揮する身体の準備が整っていないのか
- ただ重要性を知らずにおろそかにしているのか
ここではその答えはわかりませんが、選手のループがかからない原因が少し見やすくなったのではないでしょうか。
「そもそもの力(垂直方向)が足りないのか」、
「重要性を理解していないのか」、
で指導の仕方や、取り組むべき練習も変わってきますね!
その通りです。
ただ「ループをかけろ!」と言うだけでは解決しない問題です。
なぜそうなる?どうして?原因は?
そうして選手と一緒に考える指導ができると、選手も努力の仕方を学んでいくでしょう。
垂直方向の力を高める方法
垂直方向の力がないことはわかったけど、
どうすればいいんだろ…。
垂直方向の力を高める方法はたくさんありますが、1つやってみて欲しいものがあるので紹介します!
さて、問題は「どうすれば?」ですよね。
具体的な方法に入る前に考えて欲しいことがあるのですが、それが、
【垂直方向に力を発揮する(力を伝える)練習ってしたことありますか?】です。
おそらく、ほとんどのチームでやったことがないのでは?と思います。
垂直ジャンプの練習とか…?
それはありですね!
ただ、イメージとしてはボールなど自分の身体以外のものに「力を伝える」練習です。
実は、バスケットの練習では水平方向に力を発揮する場面が非常に多いです。
そう、パスですね。
練習中、無数に行われるパスによって、水平方向に力を発揮する身体の使い方は自然と習得されていきます。
これもシュートにおいて必要な力なので、大切なことです。
ただ、垂直方向となるとどうでしょう。
ボールを上に投げることってありませんよね。
考えたこともなかった…!
つまり、そもそも垂直方向に力を発揮する方法を、身体が知らない場合があるのです。
ただ上に飛ばすだけなのでとてもシンプルな身体の使い方になりますが、やったことがない選手は非常に多いです。
これは余談ですが、こういった動きからエラー動作(非効率的な動き)を分析することもあります。
もし試したことのない方はぜひ、やってみてください。
「そもそも、うまく上に投げられないじゃん!」はあるあるです。
特に低学年では。
これで垂直方向に力を伝える感覚がつかめれば、シュートも良い方向に向かうでしょう。
参考に動画を用意しました。
投げ方もいくつかやってみるといいでしょう。
多くの身体の使い方を知っておくことが、選手の可能性を広げることにつがなりますからね。
子どものシュートフォーム
最後に、少し具体的なシュートの話をしましょう。
「ループのかからないシュート」といえば、ミニバスのシュートですよね。
特に初心者の子どもはボールをリングにぶつけるように投げるのではないでしょうか。
力の分解の話でいえば、まさに水平方向の力がより多く加わったシュートであると言えます。
でも、なぜでしょうか。
そもそもの筋力が足りないから…?
8割正解です!
子どもにとってのシュートとは、「重いボールを高いリングに入れる」という課題であり、とくに初心者の子にはとても大変な課題になります。
でも、まずはリングにボールを届かせなければならない。
そうなると、子どもはまずリングにボールを届かせることを優先してシュートを学んでいきます。
つまり、筋力が絶対的に足りない子ども達にとっては、力を垂直方向に加える余裕が無いのです。
そのため、水平方向に力を集中させ、より遠くにボールを飛ばすという戦略でシュートをうってしまうのです。
もちろん最初はこれでOKです。
ただ、バスケに慣れていくうちに誰もが「より遠くから決めたい」と思うようになります。
このときに上手にシュート指導ができないと、水平方向を優先した戦略がフォームとして固まっていきます。
このフォームがミニバスのうちに染み付いてしまった選手は、中高生になってもループが低い傾向があります。
ある程度慣れてきた段階で、距離よりも高さに視点をおいた指導が必要になってくると考えています。
「遠くから届く=すごい!」
では、子どもの意識にループは根付かないのか…!
そして、こういった選手には「ある特有の身体の使い方」があります。
その1つが「脊柱の回旋」です。
みなさんも絶対に見たことがあるはず。
それほど子どもたちの中ではありふれたエラー動作です。
もちろん、そのまま大きくなれば、高校でも大学でもこのエラー動作は残存します。
↓の記事で詳しく解説しています。
正しいシュートフォームに答えはありませんが、より効率的なフォームを獲得するためには指導者の目が必要になるでしょう。
選手のフォームをよく見てみよ!
どんな声掛けをしようかな。
まとめ
いかがだったでしょうか。
ループがかからない理由について物理学を通してイメージできましたか?
本文中でも書きましたが、力のない子、初心者の子がループをかけられないのはある程度仕方がない問題です。
そんな選手とシュート練習をどう進めていくか?指導者の腕の見せ所かなと思います。
例えば、“力のない子も混ざるミニバスでシュート練習”をするのであれば、
- ループをかける余裕のある位置からのシュートを行う
- 声掛けに注意する(遠くから届くことに注目して褒めないなど)
などの工夫が必要になるでしょう。
水平方向の力に頼ったシュートはループがかかりづらいこと、横ずれが多くなることが分析によってわかっています。
力が足りないからこそ、今できることを大切にしていきましょう!
最後までお読み頂きありがとうございました。
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コメント
コメント一覧 (1件)
[…] 以前シュートの物理学でお伝えした部分ですが、まずはゴールと自分との水平距離においてボールを届かせる必要性があります。 […]