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【前十字靭帯(ACL)断裂】手術後はどうなる?復帰率は?|データから見えるリアル

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前十字靭帯を手術した後ってどうなるの?

バスラボ

非常に過酷なリハビリが待っています。
これは「痛みに耐えて」という意味ではないのですが…

なになに?!

バスラボ

すこしリハビリのリアルを紹介していきますね。

こんにちは!BMSL(@Basketball_MSLです!

今回は前十字靭帯断裂後の復帰(手術後)について書いていきます。

このケガの場合、ニュースではよく

「〇〇選手が膝の靭帯を断裂し…」

と報道されます。

そして、数ヶ月から1年後に、

「膝の大怪我を乗り越え…!」

というように、復帰が上手くいったケースが伝えられることが多いです

その影響か、断裂しても「手術すれば復帰できる、半年から1年で復帰できる」と認知されている場合が多いと感じます。

もちろん間違いではないのですが、術後から復帰までの間には、選手やそれを取り巻くスタッフの、尋常ではない努力があります。

そして、報道されない、復帰できずに忘れられているケースもあるのです…。

今回は、ACL断裂後「手術すればOK!」とはいかない、なかなか厳しいリアルを、データを交えてお伝えできればと思います。

  • 本記事の筆者
BMSL管理人について
目次

ACL断裂と手術

本題の前に、まずは前十字靭帯(以下、ACL)断裂について少し。

ACLを断裂した場合、スポーツ復帰には手術(再建術)が必要、とされています。

手術なしで靭帯を治そう、という考え方もありますが、現在のスタンダードは手術による靭帯の再建です。

以前は競技人生が終了するほどの大ケガでしたが、最近では手術法の確立やリハビリテーションの向上によって多くの選手が競技に戻れるケガとなりました

ただ、再建した靭帯が元の状態に戻るには2年ほどかかるとされており、それ以前の復帰はやはりリスクを伴うものだと言う医師もいます。

バスラボ

復帰に向けたプロトコールに関しては、以前ほど早期復帰(術後6ヶ月〜)を目指すことが減って、より長期的(1~2年)なリハビリを行ったほうが良いのでは?といった考え方も出てきていますね。

参考文献を載せておきます。

Should Return to Sport be Delayed Until 2 Years After Anterior Cruciate Ligament Reconstruction? Biological and Functional Considerations. 

Nagelli, C.V. & Hewett, T.E.. Biological and Functional Considerations. Sports Med. 2017 Feb;47(2):221-232.

こちらでわかりやすく解説してくださっています。

へえ~。
でも、2年というとかなり長いな…。
学生だったら、それだけで競技人生を左右するかも。

バスラボ

その通りですね。
ただ、早期復帰が再断裂のリスクを高めていることもわかっているんです。
復帰に関して、慎重な判断が要求されるケガであることに間違いはないですね。

その1「ACL術後の復帰率」

では、これから本題、リハビリのリアルについて書いていきます。

バスラボ

先程、術後のリハビリによって多くの選手が競技に戻っている、と書きましたが、具体的な復帰率はどのくらいだと思いますか?

復帰率か。
10人手術したとして…9人くらいは戻れるんじゃないかな。
だから、9割くらい?

バスラボ

いい線ですね!

2019年の10月に出された海外の報告によると、217人の患者のうち8割はスポーツに復帰できたそうです。

つまり、かなり多くの人が再びスポーツをすることができた、ということになります。

ただ、元のスポーツレベルに戻れたのは5割にとどまったそうです。

Return to Play and Long-term Participation in Pivoting Sports After Anterior Cruciate Ligament Reconstruction

Lindanger L, Strand T, Mølster AO, Solheim E, Inderhaug E. Am J Sports Med. 2019 Oct 21

え?

バスラボ

この文献、研究に参加した選手が1987~1994年のケガ、という点が一考の余地あり(古い)ですが、
今回のテーマのポイントはここ「もとのスポーツレベルに戻れたのは5割」なんです。

元のスポーツレベル」に戻れたのは半分…

別の報告も見てみました。

これは理学療法診療ガイドラインと呼ばれるものです。

そこでも、やはり8割の患者がスポーツに復帰し、術後1〜2年の経過で50〜60%の患者が元の競技レベルに戻れるようであるとしています。

理学療法ガイドライン第1版 ダイジェスト版

http://www.japanpt.or.jp/upload/jspt/obj/files/guideline/Guideline-QandA-Digest2.pdf

これもか…。

バスラボ

単なる「スポーツ復帰」と「元の競技レベル」の間に大きな壁があるということです。
もちろんリハビリをしている選手の殆どは後者を目指しているはずですから…

結構厳しい数字か…。

バスラボ

そう思います。

5割の選手が元の競技レベルに戻れない

どちらの報告も「術後8割の患者はスポーツに復帰できますが、元の競技レベルとなると5割程度である」としています。

つまり、残りの5割の選手は何からの理由(報告によると、多くは不安感、痛み)で元のパフォーマンスには戻れなかったということになります。

バスラボ

実際に術後の患者を見ている私としても、妥当な数字かな、という印象があります…。

術後のリハビリは選手にとって、とても長い道のりであり、モチベーションを維持するには相当なアスリート魂を必要とします。

いくら手術法やリハビリなど、選手を取り巻く環境が良くなったとはいえ、元のレベルの復帰を目指すのであれば、相当な覚悟と努力が必要になるのです。

さすがにプロ選手だけでみたら割合は高くなるんだろうけど…
5割か…。

バスラボ

低く感じてしまいますよね。
ちなみですけど、
どのようにして「元のレベルに戻れたか?」を測定すると思いますか?

え?
筋力測定とかでしょ?

バスラボ

そう思いますよね。
もう少し裏側みてみますか?

その2「何をもって以前のレベルなのか」

ACL術後の復帰に関する報告は山ほどあるわけですが、何を持って復帰のレベルを評価しているのでしょうか。不思議に思ったことはありませんか?

紹介した報告でも、5割は元のレベルに戻れたとしていますが、何を持ってそれを評価したのでしょうか。

ケガ前に所属していたチームに合流し、試合に出れれば同じレベル?

それともパフォーマンスの自己申告?本人が「もとに戻りました!」といえば元の競技レベルでしょうか?

自己申告制?
そんなことないでしょ~。
もっと具体的な評価法が…

実際に、先程紹介した2019年10月の報告では患者にアンケートを実施し調査しています。

つまり、自己申告で元の競技レベルに戻れたか否かを聞いたということです。

は?

バスラボ

自己申告制ですね。
本人が「戻れた!」と思えば、100%競技復帰です。

そんな感じ?
それでいいの?

また少し調べてみました。

ACL術後に使われる評価基準

「スポーツ復帰はできた(筋力は戻った)、でも、元の競技レベルには戻れていないかも

この微妙なパフォーマンスの評価、やはり難しいようで、IKDCという膝に関するアンケートが最も使われているようです。

(以前、ネットでみることができた報告にアクセスできなくなっているため、信頼性ちょっと微妙です…)

結局?!

バスラボ

自己申告制ですね…。

主にこの部分になるとおもうのですが、

IKDC

ここで故障前と比較して、現在がどうか?を評価するようです。

こちらはネット上でダウンロードできるものなので、興味がある方はどうぞ。

こちらから

復帰のレベルは自己申告

バスラボ

これどう思いますか?

主観ってことですもんね…。
客観性がないし、ほんとに?って思ってしまう。

バスラボ

実はこの問題、スポーツリハビリ現場の大問題でもあるんです…。

競技復帰を目指すに当たり、

「今どのくらい?ケガ前と比べてどう?」

は、よく聞く質問の一つです。

でも、多くの場合、「だいぶ良いです!」といった主観を頼りにすることが多いのが現状になります。

バスラボ

なぜでしょうか?

うーん。主観が大切だから?

主観が大切なのは間違いないのですが、多くの場合、参考にする客観的データがないからです。

つまり、本人の主観に頼るしかないのです。

先ほど紹介した報告でも、最終的なパフォーマンスをアンケートにしたのは、研究に参加した選手のケガ前のパフォーマンスを示すデータがなかったからでしょう。

バスラボ

研究の場合はもう少し複雑な問題がありますが、
とにかく、ケガ前のデータがない、ことによって復帰のレベルは非常に曖昧なものになります。

「多くの場合、復帰のレベルは曖昧」これが裏側その2、ということになります。

意外とアレなんだな…。
選手の主観任せっていうのは…。

まとめ

ACL断裂の復帰に関する裏側、簡単にまとめます。

完全復帰率は50%

報告によると、元の競技レベルに戻れる人は全体の半分程度とされています。

これを、多いと捉えるか、少ない捉えるか、それぞれの見解ですが、これが現状です。

「手術すれば復帰できる」

「1年もあれば大丈夫」

これは幻想です。

ニュースに出てくるような選手が、どれほどの努力でこの50%に食い込んだのかを考えなければなりません

大怪我に変わりはないってことですね…。

復帰のレベルは自己申告制

多くの場合、復帰のレベルは主観的なもの、自己申告制になります。

つまり、本人が「100%だ!」といえばそれが完全復帰になります。

ただ、その本人は半年以上プレーしていない人間で、かつ、術後は足もつけない状態からのスタートです。

果たして、その感覚にどれほど信憑性があるでしょう。

リハビリもその感覚を頼りに進んでいきます。

本人は100%と思っていても、実際には70%程度だった、なんてことも十分あり得る話なのです。

うーん、どうにかして解決できないものか…。

おわりに

いかがだったでしょうか。

裏側、あまり楽しい話ではありませんでしたね。

でも、多くの場合はこれが現状です。

病院のスタッフと選手は、ケガをした状態で初めて出会うことになります。

ケガ前の状態を模索しながら全力でサポートしますが、完全復帰率は50%。

曖昧な主観を頼りにしていれば妥当、むしろ良い方かなとも思います。

ACL断裂からの競技復帰、簡単なものではありません。

このケガ自体、未だ選手生命を左右するケガであることに変わりはないと思っています。

BMSLではリハビリに励む選手がこの50%に食い込めるよう、全力でサポートしていく所存です。

なにか気になることがあれば、お気軽にお問い合わせください。

バスラボ

ちなみにですが、この文中で、
多くの場合」というワードを使いましたが、これに当てはまらない場合ってどんなケースだと思いますか?
気になる方はこちら↓をご覧いただければと思います。

お!
つまり、うまくいくケースってことかな?
読んでみよ!

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この記事を書いた人

BMSL管理人のアバター BMSL管理人 理学療法士

“痛みのないバスケ”を目指し活動している理学療法士です。
バスケ選手の身体の使い方を分析し、それに必要なケア・トレーニング方法などを日々考えています。
機能解剖学的視点から新たなシュート理論を構築中です。

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