「膝が痛い」という子がいますが、スポーツ障害は膝に起こるものなのですか?
スポーツ障害はどこにでも発症しうるものです。
ただ、起こりやすい部位があったり、競技によって起こる部位が異なったりと、ある程度の傾向があるといえます。
なるほど!
それがわかれば「競技によって重点的にケアすべき部位」がわかりますね!
その通りですね。
大まかにでも理解しておくと、ケアの質も上がるでしょう。
こんにちは!BMSL(@Basketball_MSL)です!
今回は「スポーツ障害の起こる部位」についてです。
スポーツ障害のメカニズムは大まかに言うと微細損傷の積み重ねです。
微細損傷自体は運動をすれば必ず起こるのものですが、それが積み重なる部位にはある程度の傾向が出てきます。
解剖学や競技動作に起因するこの傾向を理解すると、スポーツ障害予防の質も上げることができるでしょう。
具体的には、
「全身的なケアをするけれど、ここは重点的にやろう」
「時間がなくても、ここだけは毎日やる約束にしよう」
「最近はここに負荷をかけすぎているから、メニューを変えよう」
などなど。
要点を押さえて効率よくケアしましょう!
それでは内容に入っていきましょう。
スポーツ障害の起こる部位【競技別】
まずは競技別で考えてみます。
スポーツ障害は各競技にある特異的な繰り返し動作によって生じることが多いとされています。
特異的な繰り返し動作とはこのようなものです。
- 野球 : 投球動作 → 肩肘に負担?
- サッカー : キック動作 → 足、股関節に負担?
- マラソン : 走り動作 → 下肢に負担?
- ホッケー : 前かがみ動作→ 腰に負担?
どの動きもその競技らしさを体現する動きですよね。
この動きなしではこれらの競技は成り立ちませんもんね。
微細損傷は筋肉の使いすぎなど、張力や圧力などのストレスによって生じるので、繰り返す頻度が高ければ、それだけ微細損傷が積み重なることになります。
この積み重ねが自分のリカバリー能力を超えてしまうと、炎症や痛みが生じ、いわゆるスポーツ障害の発症となるのです。
競技の特徴的な動作を考えれば、どこに負担がくるのか想像しやすいということですね。
バスケットの特異的動作
それでは、バスケットの特異的動作は何になるでしょうか。
大まかに考えると、
- ダッシュ
- ストップ
- ターン
- ジャンプ
- シュート
が主な特異的動作ではないかと思います。
バスケットは膝と足
病院で働いていても、体育館にお邪魔しても、実際にバスケのスポーツ障害で痛みが出るのは圧倒的に膝と足が多いです。
これは先程の競技特異的動作(ダッシュ、ストップ、ターン、ジャンプ)を高強度、高頻度で繰り返すからでしょう。
さらに、バスケでは重心を低く保つことが多いです。
これも膝・足に負担をかける1つの原因かと思います。
つまり、集中的なケアが必要な部位は「膝と足」となります。
SNS上でもバスケット関係のケアで紹介されていることが多いです。
ちなみにシュートも特異的動作として挙げましたが、経験上は肩・肘のスポーツ障害を発症している選手に出会ったのは一人のみです。
この一人の選手は「シュートのときに肩が痛い」という症状でした。野球など他の競技と比べて頻度は低いものの、シュート動作が負担になる場合ももちろんあります。その選手の身体能力と負荷のバランスが崩れれば、どこにでもスポーツ障害は起こり得るということでしょう。
スポーツ障害の起こる部位【解剖学より】
スポーツ障害は
・どこにでも起こりうる
・競技特異的動作が関係している
・バスケットでは膝と足に多い
なるほど。
次は解剖学的な共通点を見てみましょう。
ケアをする上では大切な視点になります。
「なぜそこに痛みが出やすいのか?」を解剖学的な視点で理解することは重要です。
それは、ケアをする際の意識を変えることができるから。
何もわからずマッサージする場合と、理由を理解した上でマッサージする場合では質が大きく異なります。
量よりも質を高めることの重要性は、近代スポーツの発展をみれば一目瞭然でしょう。
具体的に3つの部位に絞って紹介していきます。
スポーツ障害の起こりやすい部位 「肘」
まずは野球のスポーツ障害で多発する「肘」です。
肘といっても、人間の体は3Dですから、様々な角度、位置の肘が存在します。
肘のどこよ?ってこと?
そうです!
前後、左右、上下、どこも肘ですよね。
ただ、野球の肘痛では特に痛みが生じる部分があります。
野球のスポーツ障害、野球肘で圧倒的に多い部位が肘の内側です。
ではその内側を解剖学的な視点で見てみましょう。
一つの理由はこれです。
図のように、肘の内側には腕(肘から前の腕)の筋肉が何本も集中して付いています。
これらの筋肉は主に手を握る筋肉で、投球動作では酷使される筋肉になります。
これらの筋肉が高頻度に使われることで、付着部位に張力が加わり、破綻してしまう…といったものが野球肘です。
肘の内側のように、多くの筋肉が狭い範囲に付着している場合、張力が集中するのでスポーツ障害に繋がりやすいです。
場合によっては内側の骨が剥がれることもあります。
野球では投球数制限が話題になってるけど、こういうことが背景にあるのか…。
競技特性上でも、解剖学的にもここにストレスが加わることはわかっていますからね。
どんなにコンディションを高めても、限界はあるということになります。
そうなると、「ルールを変える」必要性が出てくるわけです。
スポーツ障害の起こりやすい部位 「膝」
次は膝です。
バスケットでもスポーツ障害が多発する部位になります。
肘でもそうでしたが、膝のお皿(膝蓋骨)付近には、いくつもの筋肉が集約して付着します。
もちろん張力も集中するので、スポーツ障害が生じやすいのは、この付近です。
特に膝には体重がかかるので、強度の高い動作の繰り返しは強いストレスになります。
成長期の選手に起こるオスグッドシュラッター病は、膝のスポーツ障害の典型です。
オスグッドに関しては別記事にも詳しく記載していますので、ご覧いただければと思います。
解剖学的な共通点が見えてきましたか?
いくつかの筋肉がまとまって付いている部分に多いんですね。
1つのポイントは「張力が集中する部分」といった感じでしょうか。
そうですね。
筋肉による張力が集中する部分に起こりやすいということができると思います。
それと「関節の近く」と言うこともできるかもしれませんね。
なるほど!
スポーツ障害の起こりやすい部位 「足」
次は足です。
中でも特にスポーツ障害に繋がりやすい部位というのが、アキレス腱の周囲になります。
アキレス腱には、腓腹筋、ヒラメ筋という大きな筋肉がつながっており、衝撃吸収から爆発的加速まで、強い張力が加わります。
場合によっては「アキレス腱断裂」といった大ケガにつながることもあり、少しの痛みや違和感でも要注意な部位と言えます。
【まとめ】スポーツ障害の生じる部位
さて、最後にまとめです。
競技特異的動作との関連を知る
競技で使用される頻度、強度が高い部位に生じやすい
まずは競技特異的動作を知ることが大切です。
野球であれば投球、サッカーではキック、といったものです。
走る、跳ぶ、止まる、など共通した動きもありますが、その頻度と強度がどれほどのものなのか想像することが大切です。
バスケであれば、サッカーより高頻度に短いダッシュやジャンプを繰り返しますよね。
特定動作の頻度、強度が高ければ、それだけ特定部位への負荷も高まります。
それを理解することが第一歩になります。
- 競技で使用される頻度、強度が高い部位に生じやすい
張力の集中
繰り返す頻度が多い動作がわかると、繰り返し加わるストレスの多い部位がわかってきます。
今回は筋肉による張力に焦点を当てました。
バスケであれば、膝蓋骨とアキレス腱の周囲には注意が必要です。
そこに負担が集中することを前提に、指導者であればメニューを、選手であればケアを考える必要があるでしょう。
- 筋肉が集約して付着する部位
- 関節の付近
【おわりに】身体の使い方?
競技別にストレスの集中する部位や、解剖学的に負担の集中する部位があることは間違いありません。
ただ、「じゃあ全員がなるの?」と聞かれるとそういうわけではないのです。
なぜでしょうか。
皆同じ練習をしているのに不思議ではないですか?
その説明には、最近は体育館でもよく聞くようになった「身体の使い方」にヒントがあります。
つまり、同部位に負担をかけやすい身体の使い方をしている選手がスポーツ障害を発症するリスクが高いのです。
野球で言えば「肘下がり」など肘に負担のかかりやすい姿勢がすでに研究でわかっていますが、バスケで膝に負担のかかりやすい姿勢とはどのようなものだと思いますか?
興味のある方はぜひ別記事もご覧ください!
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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