こんにちは!BMSL(@Basketball_MSL)です!
昨今、地域の体育館でも「股関節の重要性」が浸透してきていますね。
それに伴い、SNSやYou Tubeなどで紹介されている筋トレなどが以前よりも広く実施されているように感じます。
とても良い傾向だと思います!
ただ、なぜその筋トレをするのか?というところまではなかなか意識が向いていないのも事実でしょう。
今回は股関節周囲の筋トレの意味を考えるきっかけとなるような1つの視点を紹介いたします(^^)
キーワードは題名にもある「骨盤を水平に保つ」です。
- 本記事の筆者
骨盤を水平に保つ?
まずは、「骨盤を水平に保つ」とはどういったことなのかを紹介します。
図で見るとわかりやすいのですが、つまり骨盤の両端が床面と平行であるということです。
これは両足をついていれば大して難しいことではありません。
特に気にしなくても骨盤の水平は保たれると思います。
ただ問題は、運動中でも骨盤を水平に保つことができるか?ということです。
スポーツの動きもそうですが、両足がずっと地面についている場面というのはそう多くありません。
ランニングでもサイドステップでも必ず片足立ちになる時間があります。
そういった場面でも骨盤を水平に保つことができることが重要なのです。
なぜでしょうか。
骨盤が傾くと起こる弊害
骨盤は人体のほぼ中央に位置し、まさに動きの土台と言える部分だと思います。
なのでこの骨盤が傾くと、身体運動に弊害が生じます。
どのように弊害が生じるのか見てみましょう!
背骨が曲がる
正面から見ると、背骨は骨盤に対して垂直に伸びていきます。
そして背骨の上には頭があります。
人間には「頭を水平に保とう」という無意識の体の反応があり、身体が傾いても頭だけは水平に保とうとします。
つまり何が言いたいのかというと、
骨盤が傾くことで背骨も傾くのですが、頭の水平を保つために背骨が大きく曲がるということです。
背骨が大きく曲がっていては体のバランスは取れず、良いパフォーマンスは発揮できません。
これが一つ目の弊害です。
骨盤を水平に保つことは、背骨を無駄に湾曲させないという意味があるのです。
動作が非効率的になる
これも図で見るとよくわかります。
骨盤からは左右の脚が伸びていますが、この2本の脚は同じ長さです。
なので骨盤が水平に保たれていれば、両足は地面にしっかりと付くことができます。
しかし、骨盤が傾くと、骨盤から地面までの距離に差が生じてしまうので、
どちらかの足は地面から離れる、または曲がってしまいます。
この状態からサイドステップやダッシュなどの課題が与えられたらどうなるでしょう。
もちろん傾いたままでも動作の遂行はできるでしょうが、ハイパフォーマンスが期待できないのは容易にイメージできると思います。
これはほんの一例ですが、骨盤が傾くことで動作の効率が落ちるというのが二つ目の弊害です。
病院に来る患者さんの中には、骨盤が傾いたまま固まってしまっている人もいます。
それが背骨を歪ませ腰痛を生じさせている人もいれば、大きな怪我の原因となる人もいます。
こうした患者さんを見てから、骨盤を水平に保つことが人間にとってどれほど重要なことかわかりました。
骨盤を水平に保つための力学
さてここからが本題です。
体を動かす上で骨盤を水平に保つことが重要であるということは、なんとなくわかっていただけたかなと思います。
次はそれを達成させるための身体の仕組みを力学的に見ていきましょう(^^)
これがわかると、股関節周囲の筋トレの意味が深まり、動作の練習でも効率が上がること間違いなしです。
骨盤を水平に保つために必要な力
図を用いて説明していきます。
単純な積み木の図ですが、とても重要な視点が隠れています。
手を加えずに図のように木を積むことはできません。このままでは上に積んだ木は右側に落ちてしまいますよね。
それでは、これを崩さないようにするためにはどのようにすればよいでしょうか。
一つの答えはこうです。
反対側を下に引っ張ってあげれば良いのです。これで積み木のバランスが取れそうですよね。
実は、これと同じことが人間の股関節と骨盤でも起きています。
具体的に見てみると、
このように、骨盤が右側に傾かないようにするためには股関節の外側の筋肉で骨盤を引っ張ってあげることが必要になるのです。
つまり、ダッシュ、サイドステップなどにおいて骨盤を水平に保つためには股関節外側の筋肉がとても重要となり、それを鍛えることで動作を効率化できるということです。
この役割をする筋肉は「中殿筋」や「大殿筋」といった筋肉です。
すでに何度かBMSLでは出てきている筋肉ですね(^^)
なぜ骨盤が傾くのか?を力学から考える
BMSLでは
「骨盤を水平に保つために必要な筋肉がわかったし、これでOK!」というわけにはいきません。
もう少しマニアックなところまでお付き合い願います笑
何故かと言うと、やはり知っているのと知らないのとでは、
筋トレなど実際に傾いた骨盤に対する対応の質が大きく異なるからです。
知っていて損もありません。
筋力が弱いから傾く
積み木の図を見てわかるように、筋肉で引っ張れる強さよりも反対側の重さによる力が大きければ木は傾きます。
例えば片足立ちをするとき、立っている側の筋肉には骨盤の重さ、反対脚の重さ、上半身の重さによる力が加わります。
つまり、骨盤を水平に保つためには、
筋肉による力=重さ(骨盤+反対の足+上半身)
にならないといけないわけです。
筋肉がこの重さに負ければ、骨盤は傾きますよね。これが図で示す右側です。
反対に、筋力が強ければ骨盤は引っ張られた側に傾きます。
ただ、不思議なことに筋肉が弱く骨盤が水平に保てない人はこの逆、
つまり、筋肉がついている方に骨盤が傾くことが非常に多いのです。
図でいう左側のようになるということです。
筋肉が足りないのなら右側のになりそうだけどな…
不思議ですよね。筋肉が弱く、重さに耐えられないはずなのに、その逆に骨盤が傾いてしまうのです。
次はこの謎を解いていきます。
ここまでわかれば身体運動力学をマスターした!といっても過言ではありませんよ(^^)
なぜ逆に傾くのか
これを理解するには、中学の理科の知識が必要になります。
シーソーに登場してもらいましょう。
シーソーの釣り合いを考え上で重要なのが、重さと支点からの距離です。
はっ!!
覚えていますでしょうか。
つまり、
左図のように、重さが均等であれば、支点からの距離も均等にすることで釣り合います。
さらに、左右の重さが異なる場合でも右図のように、支点からの距離次第では釣り合わせることもできます。
シーソーを傾ける力は、支点からの距離が大きくなればなるほど強くなるので、釣り合わせるには反対側は更に引っ張る力が必要になります。
逆に、支点からの距離が近ければ力は弱くなるので、反対側も必要な力は小さくなります。
こんな感じです。
支点からの距離が遠い左側の図は強い力で引っ張る必要性があります。
反対はその逆で、引っ張る力が弱くても釣り合わせることができます。
これを人間の体に応用すると、支点は股関節になります。
そして、左側に引く力が筋力によるもの、右側に引く力が先ほど示した重さ(骨盤+反対足+上半身)となります。
つまり、「弱くて傾く」ということは、左側の筋力で引っ張る力が弱いということですので、
つまり、シーソーで考えれば、右に引っ張る重さを、より支点に近づけてやれば筋肉が弱くても釣り合わせることはできるはずですよね?
ピーンときましたでしょうか。
そうです。
人間は重さの位置を動かせますよね。
人間は、骨盤の上にのっている上半身の位置を変えることで重心(重さ)の位置を動かすことができます。
つまり、人間は体幹を傾けて重心を支点である股関節に近づけることで、筋肉の弱さを補うのです。
ここが一番のポイントになります!
そうすると必然的に骨盤は傾きます。
弱い筋肉がある方に傾きますね。
これが逆に傾く理由です。
なるほど…!!
骨盤の傾きをチェックしよう!
「自分はどうなんだろう…?」
気になりますよね。
実は簡単にチェックすることができます。
やってみましょう!
こちらのリハビリの記事で具体的な方法について記載しています。
手順① 片足立ちを撮影する
まずはスマートフォンを設置し、自分の片足立ちを真正面から撮影しましょう。
全身が映るように撮影できると良いです。できれば動画で。
手順② 動画を分析する
動画を止め、自分の体の傾きを分析していきます。
まずは図のように3本のラインを脳内で投影します。
写真のように明らかに身体が傾いていれば骨盤も傾いているといえます。
肩のラインや、正中ライン(水色)が歪んでいるといった場合も、骨盤の傾きがある可能性があります。
もし意識しても骨盤の傾きを修正できない場合は、股関節周囲の筋トレや柔軟などが必要な場合が多いです。
下肢の怪我であれば多用する評価になります。
おわりに
さて、いかがだったでしょうか。
少々難しかったですね…。
なぜ股関節周囲の筋トレが必要なのかを簡単に紹介するはずが、ちょっと長くなってしまいました。
申し訳ありません…。
ただ、今回の内容もある程度イメージを持っていて損はないと思います。
人間の体にも物理的な法則は必ず適応され、逃れることはできません。
つまり弱いとか、硬いとか様々あるのですが、人間はそれに上手く適応して運動を達成します。
筋肉が弱くても骨盤を傾けてバランスをとるように、無意識で複雑な調整を勝手に行います。
それが故に、パフォーマンスが上がりきらなかったり、局所的なOver useが生じたりするのです。
特に骨盤、股関節周囲筋の関係は身体運動の土台となりますので、非常に重要なポイントとなります。
片足立ちで骨盤が傾いてしまう選手、力はあるのにサイドステップが遅い選手など、
こういった視点で身体のチェックをしてあげても良いかもしれません。
「骨盤を水平に保つ」ぜひあなたの手札に入れてあげてください(^^)
長文失礼しました。
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資料タイトル一覧
- 機能解剖学に基づくシュートフォーム
- シュート探求:肘の挙がりと曲がり
- No!More!オスグッド・シュラッター病
- Physical Fitness Test for Basketball Players
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