こんにちは。
久しぶりにシュート分析の記事を書きたいと思います。
今回もTwitterにてシュート分析の依頼をしていただいた方の分析内容を記事にします。
(もちろん許可は頂いております!)
さて、テーマはシュートの「いつもと違う」が何によって生じているのか?ということです。
みなさんもシュート練習をしていて、「今のなんかいつもと違うな…」と思うことってあると思います。
とはいっても何が違うかわからず、とりあえず打ちまくるしかない…。あの感覚を目指して…。
私はずっとそんな感じでバスケをしてきました。
今回は、面白い依頼を頂いたことがきっかけで、「いつもと違う」が動作タイミングのズレから生じるものであるということが分析によりわかりました。
もちろんすべての選手の「いつもと違う」に言えることではないと思いますが、一つのヒント、視点として日々の練習に活かしていただければ幸いです(^^)
実際の分析を見ていきましょう。
依頼内容
実際のDMの画面です。
この感性…
そして、「わからんから聞いてみよ!」という勇気と実行力……素晴らしい…。
日本バスケの未来は明るいですよ皆さん…!
…話がそれましたね。
この依頼が来た時には正直少しビビりました。
なぜって、こんな分析依頼は始めてだったからです。
こういった主観的な感覚を、客観的な分析でその違いや動作を伝えるというのは意外と難しいことなのです。しかも、直接あれこれ試すのではなく、DMという限られた手法で。
とはいえ、ビビっていても仕方がないので、自信満々に依頼を承諾し、早速分析に取り掛かりました。
仮説を立てる
シュート分析に限らずですが、何かを解決したかったり、明らかにしたい場合には必ず「なぜそうなるか」の仮説をいくつか立てます。
今回の依頼であれば、
「腕が突っ張ってる?」
「うまくボールに力が乗っていない」
という、いつもと違う感覚がなぜ起こるのか?ということに関して仮説(もしかしたらこうじゃないか?)をいくつか用意するということです。
ちなみに、上記2つ以外に聞き出した主観的な感覚は、
「いつもは軽い力でシュートを打てているが、この時はいつもの力で飛距離が出ない感じがした」
「スタンディングなので力が伝わりづらい?」
「全身の連動がとれていない感じがした」
といったような感覚です。
なんとなくシュート練習を真面目にやったことがある人であればわかりますよね。
言ってしまえば、シュートあるあるじゃないでしょうか。
こういった感覚をもとに、送っていただいた動画を分析し仮説を立てていきました。
さて、実際の仮説を見ていきましょう。
仮説1 「ボールの持ち上げが遅かった?」
1つ目の仮説は「ボールの持ち上げが遅かった?」ことにより、いつもと違う感覚が生じたのではないか?ということです。
実際の分析画像を見てみましょう。
画像にもありますが、②の写真がいつもと違う感覚が生じたシュートです。
①、③は上手くいったシュートとされています。
この並んでいる3枚の写真は適当なタイミングの写真ではなく、それぞれ「膝が最も曲がった時点」をスクショしたものです。
そうすることで、膝が最も曲がったタイミングでの様々な位置関係を見ることができ、それを比べることができるようになります。(これは企業秘密ですよ笑)
実際に比べてみると、
肘の上がり具合が異なるのがわかります。
それぞれ撮影角度が微妙に異なるので詳細にはわかりませんが、この3枚で比べれば②の写真だけ肘が低いのは一目瞭然です。
つまり、この時点で②だけがいつもよりボールの持ち上げが遅かったということができます。
ボールの持ち上げが遅い事による影響
ボールの持ち上げが遅いことはシュートにどんな影響を与えるでしょうか。
単純に考えればリリースまでの時間が遅くなります。
①と③はすでに頭上近くまでボールが上げられているので、リリース地点まで時間はかかりません。
それに対し、②はまだ顔付近にありここからまだ持ち上げなければリリース地点までいきつきません。
つまり、同じ動作速度で動作を実行したとすれば②のリリースが遅くなり、シュート動作自体が遅くなるということです。
ただ、実際にシュート動作自体は遅くなってはいません。
どういうことでしょうか。
動画を分析してみると、②の動画はここからボールの動きが急に加速します。
つまり、①と③は終始ゆったりとスムーズに動いているのですが、②だけ途中からボールがビュンッと動くのです。
これが何を意味しているのかというと、
ボール持ち上げの時間的な遅れを腕の動きを加速させることで取り戻しているということです。
腕や肘の関節運動が加速するということは、それだけ力を加える必要があり、それがいつもと違う「腕が突っ張ってる?」感じにつながったのではないかと考えられます。
つまり、ボールの持ち上げるタイミングがいつもより遅かったことで、無理に腕を使ったシュートになったのでは?というのが仮説1です。
仮説2 「膝を曲げすぎた?」
続いて仮説2ですが、
これも実際の画像を見てみましょう。
ここでも膝の最も曲がった時点でのスクショを比べています。
すると②の膝の曲がりが大きいように見えます。
撮影角度が違うのでなんとも言えませんが、おそらくこの中では最も曲がっています。
皆さんは膝のよく曲がった良いシュート!と分析しますか?
Twitterでも膝の曲がりについては何度かつぶやいたことがありますが、シュートにおいて膝は曲がれば曲がるほど良いというわけではありません。
膝を曲げすぎることが悪影響を与えることもあります。
膝を曲げすぎることによる影響
シュートを教える際に「膝をしっかりと曲げて」と指導することがよくあります。
これは脚の力をボールに伝えるためであると考えられますが、実はこれが良い指導なのかというとそうでない場合があります。
それが、膝をよく曲げることで屈伸の速度が遅くなっているという場合です。
こうなるとボールに伝わる力が小さくなり、結果、ボールが飛ばなくなってしまいます。
どういうことかというと、物理的な話になりますが、
物体の動きの激しさ(ここでいうボールの飛距離)は、その物体の重さと速さによって決まります。
シュートの場合ではボールの重さが決まっていますので、速さが速くなればなるほど理論上ボールはよく飛んでいくということになります。
ゆっくりとした動きで遠くにボールを投げることが難しいのはこのせいです。
イメージできますでしょうか。
少し話がそれましたが、つまり、大きく膝が曲がるということはそれだけ屈伸に時間がかかるということを意味しており、屈伸の速度が遅くなります。
膝の屈伸速度が低下すればボールに伝えられる力が減少し、飛距離が出なくなるということに繋がります。
(正確に言うと、大きな屈伸でも同じ時間で動作を達成することは可能ですが、それにはより強く筋力を発揮する必要が生じます。)
つまり、②のシュートは膝が曲がりすぎたことで脚による力発揮が減少し、その分腕に頼ったシュートになったとのではないか?というのが仮説2です。
2つの遅れによるタイミングのズレ
この2つの仮説は関係ないようで関係しています。
シュートとは全身の関節運動ですので、何かが遅れれば仮説1のように、どこかが加速しその遅れを取り戻したり、
仮説2のように発揮できなくなった力をどこかで補わなければならなくなります。
これが「いつもと違う」という感覚に繋がるということは十分に考えられることです。
今回で言えば、
「ボールの持ち上げが遅かった」こと
「膝が曲がりすぎた」こと
この2つによって動作のタイミングが完全に「いつもと違う」状態に陥っています。
主観的なものではなく、客観的な分析としてズレが確認できているというのがとても面白い点かと思います。
もしこの選手が不調で困っていてアドバイスがほしいというのであれば、
「膝が一番曲がるタイミングでボールは顔面の高さにあると良い(感覚でうてているようです)」
「膝の曲がりが大きく、遅くなると腕に頼ったシュートになっている可能性があるので、そういった感覚があるのであれば膝の屈伸を速くすることを心がけてみると良いかもしれません」
といったところでしょうか。
まとめ
良いときと悪いときのフォーム比較というのはなかなかに面白いものでした。
実際にズレが確認できたというのが特に面白かったです。
逆に言うと、やはり「いつもと違う」と感じた時には身体現象として何がが「いつもと違う」ことになっているということでしょう。
そして、選手の訴える主観的な表現にはそれなりに信憑性があるということなのでしょう。
この分析結果をこの選手に伝えた結果、
いや、こんなの鼻血出ますよ…。
こんな分析とアドバイスで少しでも選手の支えになれたことがとても嬉しい…。
なにかシュートで気になる点がありましたらお気軽にご連絡ください。
もしかするとお力になれるかもしれません。
長文失礼致しました。
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